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ずっと、きっと、もっと、会いに行くよ!

Birthdayはキスと君と

暑すぎますね。

相変わらずクーラーのない我が家の夏は汗だくです。

 

今年は調子に乗って王子の誕生日の前だと言うのに別のものを書いてしまいました。
今日はあの人の誕生日ですね。ってことで~

 

※ほんの少し大人向けなルーレット(おっとき)
※一人暮らし設定

 

では続きから…

 

 

 

「おっかえりー!」

 

深夜0時過ぎ。一人暮らしの部屋に帰宅後、待ち構えていたのは見覚えのありすぎる赤髪の青年。
我が物顔で廊下にひょっこりと顔を出して、にこにこしている。

 

「…今日はそんな約束でしたか?」

 

何故貴方がここに。おかえりーではありませんよ。など言いたいことは山程あったけれど、ひとまず確認から入る。
彼は私の部屋の合鍵を持っている。従ってこの部屋に入ることは可能であり、問題はそこではなくて。

 

「ううん。びっくりさせようと思って」

 

悪びれる様子もない音也は嬉しそうに続けた。既のところで溜息を飲み込みながら、玄関で靴を脱ぎ廊下を通って部屋の中に入る。

 

「このタイミングで、ですか?」
「えー?このタイミングだからだよ?」

 

私が言ったのは、何故今日をそのびっくりさせる日とやらに選んだのか、という意味だった。
今日、正確には日付の変わる前の昨日、私は単独ライブ公演を終えたばかりだ。ライブ当日はコンディションの調整、リハーサルなど早朝から公演終了まで息をつく暇がない。そしてそのライブはこの男も客席で観覧していたので、私が今体力をかなり消耗し疲れ果てていることは重々承知のはずだ。
彼がここにいることに対し文句を言いたいというわけではない。けれどすぐに休むつもりで帰宅した部屋で出くわしたのだから、その理由を聞きたくもなってしまう。


音也の言っている意味をいまいち掴めないまま、持っていた荷物を下ろしソファーに腰掛ける。
音也も続いて隣に座り、その様子を何となく目で追っていると、まもなく目が合った。

 

「…誕生日おめでとう!」

 

大きな声で、満面の笑みで告げられた一言にはっとする。
そうか、もう日付が変わっていたのだった。疲れているのか今更思い出した。
ライブ公演はいわゆる自身のバースデーライブだった。日程の都合上、実際の誕生日の前日の夜に行われたライブ。会場では集まったファンたちに幾度となく言われていたし、スタッフからも何度も何度も告げられていた言葉だった。
このタイミングだからというのはそういうことか。我ながら鈍いというか、あまりに配慮にかけていた。

 

「ライブでいっぱい言われてたでしょ?でもどうしてもほんとの誕生日に、一番に言いたくて」
「た…確かに、一番ですね」
「お、驚いてる。作戦成功だね!」

 

やったー!とガッツポーズを決める様子を見て笑ってしまう。相変わらずだ、この男は。
これを言うためにわざわざこんな時間に訪ねて来てくれたというのだから、これではいくら疲れていても無下にする気にはなれない。むしろ感謝を伝えなければならないことだ。

 

「ありがとうございます、音也。その…嬉しいです」

 

目を合わせながら告げたものの、すぐに自分の手元に目を逸らしてしまった。改めて口に出すと気恥ずかしいものがあって、感謝の言葉こそしっかりと伝えなければならないとは思うのだが口ごもってしまう。
それにしてもいくら突然のこととは言え、『嬉しい』などと単純にも程がある感想を言ってしまった。もう少し気の利いたことは言えないのかとすぐに反省する。

 

「…トキヤ」

 

続く言葉が思い付かず間を持て余していると、ぽつりと小さな声とともに影が落ちる。
音也の手が頬に伸びてきたかと思うとそのまま強引に顔を引き寄せられ、口を塞がれた。

咄嗟に目を閉じて大人しく受け入れるが、唇を舌で突付かれて驚きと同時に身じろぐ。ぬるりと湿った感触が右から左、下から上へと忙しなく動き、やがて固く結んでいたはずの唇の合間からいとも容易く侵入を許してしまう。

 

「っ…!」

 

舌と舌が触れると、ピリリと電気でも走ったかのような刺激が頭の先まで届くようだった。
最近は互いに時間を取れずにいたのもあり、こういった行為自体相当久しぶりだ。そのせいか少し触れただけで声を上げそうになる程過敏になっているらしい。
しかしそれを悟られるのはどこか癪だ。これ以上当たらないようにと舌を奥の方へ引くものの、すぐに追いかけられて捉えられてしまう。
ざらざらとした表面を合わせてみたり、舌先だけを絡めてみたりと落ち着きなく口内を犯されながら、他に音のない部屋の中で途切れなく響く音をどこか甘美に感じる自分もいて。
わずかにめまいを覚えるのは酸素が足りないせいなのか、それとも。

 

頬に添えられていた音也の手は後頭部のあたりへ移動していき、空いていたもう片方の手はじりじりと服の上から脇腹を這う。
ただのくすぐったさとは違う感覚に襲われる。近くで聞こえる音也の呼吸は少しずつ速くなっており、このまま受け入れているとなし崩し的に抵抗が出来なくなりそうだった。
…何せ私はライブを数時間前に終えたばかりで、体力はほとんど残されていない。このまま押し退けたくない気持ちもあれど、今はここまでにすべきだ。
妙に冷静に働く思考に我ながら内心苦笑いする。だらんと下ろしたままだった腕を持ち上げて、音也の胸を手で押し返した。

 

「ん…」

 

声を上げたのは音也で、体を押されたことに気が付きゆっくりと離れた。口が半開きのまま、潤んだ目でこちらを見つめてくる。今の今までがっついていたのに、まるで子犬のようなあどけない表情。

 

「音也、……その、今日は」
「わかってる。ライブだったんだし、…!」

 

上がってしまった息を整えながら言うと、目が合うなり音也は急に口をつぐんだ。
かと思うと突然、何かあったのかと聞く間もなく、私の頭に置いたままだった手を引き寄せて抱きついてきた。

 

「!」
「…疲れてるのにごめんね。けどさ…」

 

抱きしめる腕の力が強くなる。声が聞こえるたびにその息が耳に掛かる。

 

「さっきまでステージでキラキラしてたトキヤが、今は俺の前でこんな溶けちゃいそうな顔してる。…たまんない」
「なっ…!」

 

何かと思えば甘ったるい声でそんなことを言い出す。
今がライブ後であることは事実で、今は二人きりの空間であることも事実だ。けれどわざわざ言葉にされると変に意識してしまう。というか私はそんなに変な顔をしていたのか。いやそれよりも、もしかして私に食い付きながらそんなことを考えていたのか、この男は。
…たまらないも何も、こんな姿を見せるのは後にも先にも貴方だけだというのに。今更一体何を言っているのかと思いつつも、それを口に出す勇気はない。

 

一際強く抱きしめられた後、離れたかと思えばこちらの目を覗くように上目遣いをされる。縋るような、吸い込まれてしまいそうな視線。
まったく、こういったことをいとも簡単に無意識にやってのけるのだから勘弁してもらいたい。いつものことながら本当に慣れない。返す言葉が見つからず、目を泳がせた。

 

「ねえトキヤ、これからもずっと、」

 

甘えたような声で続けるものだから、半ば反射的に唇を押し付けた。
言葉を遮るだけの、触れるだけのそれには、行き場のない、どうしようもない愛おしさを乗せて。

 

「当たり前です」
「もう、最後まで言わせてよ?」

 

一方言葉を飲み込むしかなかった音也は、わざとらしく頬を膨らませる。
あやすように前髪に触れてくしゃりと頭を撫でてやると、嬉しそうに微笑んだ。

 

「…これからもずっと一緒にいてね。この一年がトキヤにとって、とっても素敵な年になりますように」

 

ね、と小首を傾げる姿を見て、こちらまでつられて口角が緩むのを感じる。
そして唐突に、痛いほどに実感する。私はきっと誰よりも幸せな誕生日を迎えているのだろうと。

 

数時間前までは、私を応援してくれているファンへ心を込めたパフォーマンスを披露できた。「おめでとう」と何度も声を掛けてくれるファンへ少しでも恩返しがしたい。一人でも多くの人を笑顔にしたい。そんな思いでステージに立っていた。ライブを行えるのはファンの応援があってこそ。諦めずにここまで来てよかったと心から思えた瞬間だった。

 

そして今は、大切な人が目の前で幸せそうな顔をしている。これからも一緒にいて欲しいと言ってくれる人がいる。わざわざ深夜に駆けつけて「おめでとう」を伝えてくれた彼に出会えたこと、それだけで生まれてきて良かったと思えてしまうのだ。
彼に出会う前の自分が思い出せなくなりそうな程、私にとって音也の存在は大きい。精神的支柱であり、誰より愛おしいと思える存在。

 

「ありがとうございます。良い一年にしましょう、一緒に」
「…うん!」

 

次こそははっきりとした声で伝える。
良い返事を聞き届けてからもう一度唇を重ねた。今度は少し長くて、言葉だけではとても伝えきれない思いを乗せて。
今日からはまた新たな一歩。来年もその先もどうか隣にいられますようにと心の中で何度も願った。

 

 

Birthdayはキスと君と

 

 

 

***

お疲れ様でした。ド定番?ぽい話にしてしまいました。
でもCPとしては実はほとんど書いたことなかったのでなんか緊張しました。

 

誕生日おめでとう!!
幸せな誕生日を過ごせるよう祈るばかりです。