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ずっと、きっと、もっと、会いに行くよ!

無題

王子お誕生日おめでとうございます!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
発売後2度目のお誕生日ですね。
また書いたものを置きに来ましたよ。


*BH4話軸。つまり王子が学生の頃の話。
 高校入学と共に一人暮らし始めたと解釈しています。そんな2年生の夏。
*いぐ→←のくです。お互いなんとなーーく気付き始めてる。

では大丈夫の方のみお進みください。



「じゃ、お邪魔しましたー!」
「じゃあな」
「二人とも、気を付けて帰れよ」
「わざわざどーもな」

玄関先で男四人、そう言葉を交わして、うち二人は扉の向こうへと消えて行った。
カチャ、と聞き慣れた音を立てて扉が閉まる。
無理やり貼り付けていた笑顔と言葉と共に顔の横へ挙げていた手は、途端に行き所をなくしてしまった。

時刻は22時頃。防音性のあるマンションであるのを良いことに、今夜もいつものメンバーでこんな時間まで騒ぎ通していた。
いつもと違うのは、料理が幾分か豪華だったこと。そして今しがた帰って行ったグラディオとプロンプトが、オレ宛にプレゼントを持って来てくれたことくらいだ。
今日はオレの誕生日だった。一人暮らしを始めてからは二度目の誕生日、やはり城でかしこまって過ごすよりも何百倍もマシだ。
しかし。

「…。」

さて、問題はここからだ。
ちらと横に並ぶ男を見る。ここはオレの部屋であり、奴の家は当然別にある。しかしこの男はさも当たり前な顔をして、他の二人を見送っていた。

「そんなに帰って欲しくなかったのか」

横目で顔色を伺っていると目が合ってしまった。玄関で立ったまま動かないオレを見てそんなことを言う。
ふう、と溜息を吐きながら眼鏡の位置を直す仕草を見て、うるせーなと言いそうになるところを飲み込んだ。
確かに、昨年の誕生日には四人揃ってこの部屋で泊まった。泊まったと言ってもベッドはオレの分しかないし、リビングで夜通し騒いでいつの間にか寝てたってだけの話だが。
とにかくあの日は4人で過ごした。でも今日はプロンプトが夏休みの宿題が終わってないとかなんとかで、時間を見るなり慌てて帰ると言い出したのだ。
それを聞いたグラディオが夜も遅いから送ってやると立ち上がり、結局二人揃って帰ってしまった。

本音を言うと、帰って欲しくはなかったわけで。
約束はしていなかったが、当然今日は泊まっていくものだと思っていたわけで。
宿題ならオレのを見せてやるって言ったのに、この眼鏡が“まずは自分でやらないと意味がない”といらない横槍を入れたせいで。
…そう、二人が帰ってしまったのも、今この状態を作り出しているのも、オレが不機嫌になっているのも、すべてイグニスのせいだ。

「…別に」

帰って欲しくなかったと素直に答えてやる義理はない。そう思って一言だけ告げるとさっさと踵を返しリビングの方へと戻って行く。
寝室を通り過ぎたあたりで後ろから追ってくる足音。こっちまで溜息を吐いてしまいそうだった。

「風呂は」
「朝入る」
「もう寝るのか」
「まだ」

背後から聞こえる質問にさっさと答え、リビングに戻ってきた。ソファの辺りまで進み立ち止まるともうひとつの足音も止まる。
動く気配はない。オレの言葉を待っているのか?それすら今は癇に障る。
ふつふつと自分の中に苛立ちがつのっていくのを感じながら振り返ると、イグニスは数歩分離れたところでこちらをじっと見つめていた。

「…お前は帰んないのかよ」

我ながら真っ当な言葉だと思う。ここの家主はオレで、そうではない他二人は帰って行った。
いくらオレの世話係と言っても、当然ここに住んでいるわけではない。本来であれば一緒に帰っていても何らおかしくはない。

…つまり、ここにはオレとイグニスの二人しかいないわけだ。
そのことを意識したくないし、何よりどうすべきなのかわからなくなる。だからあの二人には帰って欲しくなかった。
出来る限り、二人きりにはなりたくなかったからだ。

オレの言葉を聞くと、イグニスは視線を逸らしキッチンを指した。

「まだ片付けが終わっていない」

だからまだ帰らない、と。
理由としてはこれまた真っ当だ。確かについ先程までこいつの手料理を摘みながらわいわいやっていたのだ、キッチンにはまだ洗っていない皿やコップが残っているんだろう。
それはその通りだし、イグニスが片付けをせずに帰って行ったことなど今まで一度もない。
しかし、聞きたかったのはそういうことではなく。

「終わったらどうすんだって聞いてんだよ」

とうとう溜息を吐いてしまった。悪態をつきたくて吐いたのではなくただ落ち着かなかった。
聞いたは良いものの、返答次第では考えなくてはならないことがもっと沢山増えてしまいそうだったから。
腕を組み自分の足元を見つめると、笑った気配がして。

「ふてくされた王子を一人にする訳にはいかないからな」

その声に楽しげな色を感じて顔を上げる。やはり薄ら笑いを浮かべながらこちらを見下ろしていた。

「だから、ふてくされてねーって」

さっきも言ったろ。二人が帰ってしまったから機嫌が悪いというのはあながち間違いではないが、イラついてる原因はお前だからな。
何だかのらりくらりと躱されているような気がして、それすら鬱陶しい。思わず睨み付けた。

「それともオレでは役不足か」

睨み付けたところで悪びれた様子は一切ない。しかし、声色は明らかに変わっていた。
今度はからかうようなものではない。不意に低い声で、真っ直ぐに見つめられる。
役不足って言葉の意味、お前が知らないはずがないのに。どうしてこの場で、この状況で、そんなことが言えるのだろう。

本当に腹が立つ。役不足な人間と二人きりになって、こんなに動揺するわけねーだろ。

「…もういい。やっぱ風呂」

胸倉掴んで問い質してやりたい気分だ。それが出来たらどんなに良かっただろう。
これ以上話していると本当にそうしてしまいそうで、とにかくこの場を離れたくなった。顔を背けてさっさと浴室に向かうため、横を通り過ぎる。

「ノクト、」

いつもより大きな足音で強く踏み出して、その場をあとにするはずだった。しかし声と共に逆方向へ力が加わり前につんのめる。
イグニスにぐいと腕を掴まれ引き戻されたのだ。

「!?なんっ…」
「どうして欲しい?」

落ち着き払った声。何すんだよと文句を言いたい。今すぐ声を荒げてこの手を振り解きたい。
それなのに先程よりも近くにある顔を見上げると、その視線に射抜かれたかのように体が動かなくなる。

「今日はノクトが主役だ、決める権利がある」

言っていることもやっていることもメチャクチャだ。
主役って誕生日だからか?もっともらしい理由をつけて判断を委ねようとしているあたりも許せない。
しかし何より頭に来るのは、自分の心音が馬鹿みたいにうるさくて、目も逸らせなくて、ここまで来てもなお腕を振り払えない自分に対してだ。

「……、好きにしろよ。権利なんていらねぇ」

やっと出た言葉。顔を背け、視線をようやく外すことが出来た。
オレが言えば何だってやるのか。そういう言い回しが嫌いだってことを一番知ってるのは、“王子”の一番近くにいるお前だろ。
それをわかっていてこんな言い方をするのだ、この男は。
掴まれた腕を振り払おうと力を入れる。しかしイグニスはそれを良しとせず、手に力を込めてくる。

「お前な、」
「…そんな言葉、どこで覚えてきたんだ」
「はぁ?」

突然訳のわからないことを言うものだから、せっかく逸らした顔を元に戻してまじまじと覗いてしまった。
ついさっきの表情はどこへやら、焦ったような顔。
今日のお前、いつも以上に意味わかんねぇ。そんな言葉ってどの言葉だよ。

「いや、何でもない。…とにかく風呂に入ってこい、片付けでもしながら考えておく」

空いている方の手で眼鏡を触ると、ぼそぼそと独り言のように言う。言い終わるといつも簡単に腕が開放されて。

「イグニス」
「風呂は沸いている、ゆっくりして来い」
「おい!」

勝手に引き止めておいて勝手に一人で話進めやがって。
このまま黙ってはいそうですかって風呂になんか入ってられるか。

「…メシ食い過ぎて苦しいわ。なんかすっきりするもん食いてぇ」

言ってから、今度こそ浴室の方へと足を向ける。
思い付きで放った一言は矛盾だらけだったけれど、後ろから聞こえる、え、とか、わかった、とか言う歯切れの悪い返事を聞くに、どうやら案外悪くない切り返しが出来たらしい。


(…とんだ誕生日だな)

いや、マジで腹いっぱいだわ。








***
アニバーサリー感ゼロでごめんなさい。お疲れ様でした。ww
去年書いたものとの落差がすごい。
そしてまたタイトルつけてないじゃんごめんなさい。

ほんとは冒頭に4人の会話がもっといっぱいあったのですがカットしてしまいました。
ププが宿題やってないから帰んなきゃ!って言って、は!?泊まってかねーのかよ!って王子が焦って、
お前が宿題とか明日は雨かよ。とか兄貴が言ってました。
んでノクトもちゃんとやんなよー?とか言われて、なめんなよもう終わってるっつーの。ってドヤ顔する王子とかもいました。
イグの“横槍”はその名残です。笑
夏休みって8/31までですよね…てことは翌日が夏休み最終日ですもんね…
 

※追記※
続きが出来ました。よろしければどうぞ。
oolinklinkoo.hatenadiary.org