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ずっと、きっと、もっと、会いに行くよ!

春はいつか必ずやってくる。

わあおギリギリだぜ!!!!!!1
逆裁アニメ化おめでとう!!!まもなくアニメ放送開始時間です!!!
記念文です!!

*たぶん4〜5の間か5のあと
*捏造設定あり
(アニメ化=ドラマ化という扱いにしております)
*not腐です、短いです


興味のある方はどうぞ!




駅の近く、小さなカフェテリア。平日の夕暮れの街は賑わっていた。
暦上は春を迎えているものの、ひんやりとした風はまだまだ冬の名残をとどめている。
店の前に設置された人影のないテラス席を横目に、僕は足早に自動ドアを抜け店内に入った。今日もそこそこの混み具合のようだ。
カウンターで注文を済ませ『本日のコーヒー』を受け取ると、いつもの一番奥の席へ向かう。

「御剣」

見覚えある背中に声を掛ける。
僕に気付きすぐに振り向いた御剣は、軽く右手を上げた。

「ごめん。結構待ってた?」
「いいや、そうでもない」

向かい合って座る二人用の席。ここはいつも僕らが待ち合わせに使っている席だった。
ここでなくてはならない理由は何もないけれど、僕自身は壁に隣接していると落ち着くし、それなりに気に入っている。
テーブルを回り込み鞄を床に置いてから御剣の正面に座ると、何やら紅茶の入ったカップを片手にノートパソコンへと視線を落としているようだった。

「仕事?」
「そんなところだ。すぐに片付ける」

キーボードを叩く音が僅かに聞こえる。少し薄暗い店内では、御剣の眼鏡のレンズに反射した画面の光が妙に眩しく感じた。

「相変わらず忙しいんだな。ま、無理もないか」

コーヒーを一口。
検事局長ともあろうお方が暇を持て余している訳もない。今日こうして顔を合わせたのも数ヶ月ぶりだ。

「君こそ、あちこち走り回っているのではないか?部下たちもさぞ苦労していることだろう」
「人聞きの悪い。部下をこき使ってるのは、僕よりもお前の方だろ?局長」

肩書きをあえて強調するように言うと、御剣はぴたりと動きを止めた後、パソコンを閉じてから顔を上げた。

「…、人聞きの悪いことを言うな」
「…ぷ、まあ、お互い様ってことで」

図星だと言わんばかりに眉間にシワを寄せ力なく反論してくるのを見て、思わず笑ってしまう。自覚はあるみたいだな。
もう一口コーヒーを飲んでから、頬杖をつく。ふと視界に入ったのは足元に置いた自分の鞄だった。
早速本題に入るか。時間も限られている。鞄に手を伸ばして、一つのクリアファイルを手に取った。

「これ、読んだ?」

テーブルの上に置くと、中身を取り出すまでもなくそれが何なのかすぐに気が付いたのだろう、御剣はあぁ、と小さく頷いた。

「…多少は」
「僕も少しだけ。まさかこんなことになるなんてね」

ファイルから紙を引っ張りだして、パラパラとめくる。
クリップでまとめた数枚のコピー用紙、その表紙には、僕らが口に出して読むには少し恥ずかしいタイトルが大きく印字されている。

「それにしても、まさか御剣が許可するとは思ってなかった。ドラマなんてさ」

今は真剣に読む気にはなれないけれど、なんとなく紙の上に並んだ文字を目で追っていく。
これはテレビ局から送られてきた資料をコピーしたものだ。
先日突然うちの事務所に『ぜひ成歩堂先生の歩んできた弁護士人生をドラマ化したいんです!』なんて、暑苦しい電話が掛かって来たのがすべての発端だ。
どうやら僕の新人時代にスポットを当てた、完全再現ドラマを制作したいということらしい。

「…決して二つ返事をした訳ではない。悩んだ末の決断だ」

暑苦しい電話を受けたのは、新人時代に僕とよく対峙していた御剣とて例外ではなかった。
僕が良しとしてもこいつだけは絶対に許可をしないと思っていた。
しかし、結果として御剣本人はおろか、警察関係者や弁護士の機関からも承認が下りて、第一回目の打ち合わせである今日を迎えている。

「僕もね、最初はかなり反対した。あまりいい思い出ばかりじゃないし」

今回のドラマの再現ストーリーには、例のひょうたん湖の事件やDL6号事件も含まれている。
もう相当昔の話とはいえ、御剣自身あの事件のことは思い出したくもないはずだ。
千尋さんの事件も再現されることになっているし、やはり僕としても快諾という訳にはいかなかった。

「…だが、法曹界に対して世間の関心を向けさせる良い機会にはなる。であれば、断る理由など、ない」

御剣は紅茶を静かに飲み込んでから言った。
彼は今や検事局を取り仕切る身だ。法曹界の重要な役目を担う一員として、私情だけで判断するわけにもいかないのだろう。

「僕も同じこと考えてたよ。…これで、良いんだよな…きっと」

つい、歯切れが悪くなってしまう。
関心を持ってもらうことにより、必ずしも良い効果が出るとは限らない。
この国に住む、いや、世界中の国に所属する者すべてが、無関係ではいられない法という枷。
再現ドラマによってそのほころびが顕著にならない保証なんてどこにもない。
下手をすれば国を巻き込んだ大きな騒動に発展する可能性だってある。メリットばかりではないんだ。

…というのもあるけれど、僕の新人時代の再現が全国放送で流れてしまうというのは…、正直言って、考えただけで胃がキリキリするな。
うまいことストーリーをいじって、カッコよくまとめてくれれば良いけど。


「いつまでも過去に囚われている訳にもいくまい。背筋を伸ばし、真っ直ぐに前だけを見て、私は私に出来ることをやるだけだ」

と、僕の情けない思考とは裏腹に、御剣がはっきりとした口調で言う。
思わず笑ってしまった。こいつはやっぱり僕とは違う。悔しいけどきっといつまでも敵わない。

「そういうとこ、ほんと昔から変わんないんだな」

ぼそりと出てしまった言葉は、まるで負け惜しみのようにも思えて。
僕はと言えば、一度弁護士生命を絶たれたあの日から、180度変わってしまった気がしている。
真新しい初めての弁護士バッジを胸元に付け、必死に駆けずり回っていたあの頃と、
ピアニストなんてのを名乗りながら、娘や部下に支えられながら、二度目の真新しいバッジを手に入れた、今。
自分で言うのもおかしいが、こんなにも奇想天外な人生で荒波に揉まれてきたんだ、変わらずにいろという方が無理だ。

「君だって昔と変わらないさ」
「…え、」

小さく笑いながら御剣が言う。

「諦めの悪いところは、今もあの頃も、変わっていない」

眼鏡の奥の瞳が、仕事中には決して見せない柔らかな色を含みこちらを見ていた。
しかし、困ったもんだ。相手がやり手の検事ともなれば、嘘をつくどころか考えていることさえ当てられてしまうのか。
とっくの昔に慣れたつもりでいたけど、どうにもやりづらい。友人として付き合うにはなかなか厄介だな。
…って、人のことは言えないか。僕も。

「…まあね。またこの世界に戻ってきた、それが諦めの悪い何よりの証拠だな」
「それが君の取り柄だろう?」
「唯一のね」

大げさに肩を竦めながら言うと、御剣がくすりと笑った。僕もつられて笑う。







「…そろそろ時間だな。行こうか」

久々に会ったのだからもう少し話し込んでいたい気持ちもなくはないが、今日は遊びで来ているのではない。
テレビ局での打ち合わせの時間が迫っている。
立ち上がってから、資料を鞄へと放り投げた。そうだな、と御剣も続いて立ち上がる。


…例え年月がいくら経とうと、
今と昔じゃ、立っている場所も状況も、何もかもが違っていようと、
僕らがそこにいたこと、そして今僕らがここにいることは
すべて事実であり、現実であり、揺らぐことはない。

見届けてやろうじゃないか。この国の法律の未来とやらを。
ただ見ているだけじゃない、ここまで来たら、とことん足掻いてやろう。







「楽しそうだな」

店を出て、隣に並んだ御剣が言う。

「そう?」

コートの襟を立てる。今日は風が強くて、冷たくて。
まだまだ春は遠くにあるらしく、街路樹はまだ葉をつけてはいない。

「御剣。…この泥舟、最後まで付き合ってくれるか?」

…けれど、春はいつか必ず。僕らの元へやってくるから。

「ふん、…今更何を」

小さな微笑みと小さな言葉は、冷たい風の中へと消えて行く。
そういうお前だって、随分と楽しそうじゃないか。



Truth begins with a smile



真実は、微笑みから始まる。









お疲れ様でした。お読みいただき感謝です。
タイトルは某世界的有名人の名言をもとにしています。
余裕のある微笑みをたたえながら、決して目を背けず前へ前へ進む。というのと、ピンチの時ほどふてぶてしく笑うという教えを微笑みに込めて。

なんとなくですが、なるほどくんは4以降清々しいほど自虐もするししれっととんでもないこと言ってのけるし部下にやらせたりするし、
5のミッたんも何か吹っ切れたような、あぁ歳を重ねたんだな…と思うような雰囲気を醸し出していて、それがすんごく好きなので、ちょっとはそんな感じの文になってたらいいなぁ、と思っています。うまく言えないけど…。

この言い訳を書いているのはアニメ1話を見た後ですが、本文を書いている時は当然見ていませんでした。
テレビ局があるようなところはきっと都会な街並みなんだろうな、と思ってカフェテリアなんて書き方をしましたが、アニメ見てびっくり。マジでむちゃくちゃ都会。www
結果オーライですね。


アニメの今後も6も楽しみすぎてまだまだしねないなって思います。
逆裁の文って実はあまり書いたことがないんですが、今後はこの機会にぜひ書いていけたらなぁって思いました。